1st mini Album「陽はまた昇る」Release!【SPECIAL INTERVIEW】

盛岡在住の3人組ロックバンドFUNNY THINKが6月24日、初の全国流通版となるミニアルバム「陽はまた昇る」をリリースする。大船渡市出身のVo/Gt.金野一晟とDr/Cho.森亨一のオリジナルメンバー2人に、盛岡市出身のBa/Cho. Marcyが加わった新体制で完成させた音源は、湧き上がる反骨心を歌い鳴らし続けるバンドの姿を凝縮した1枚だ。彼らの楽曲には、小学6年で東日本大震災を経験し、苦境の中で音楽に希望を見つけた金野と森が抱く、パンクロックへの敬意と感謝があふれてやまない。新メンバーを迎えての制作過程やバンドとしての音楽への向き合い方について3人に聞いた。


―Marcyさんはどういうつながりでの加入だったんですか?


金野)前のベースがやめることが決まって「次、誰に声をかける?」っていう話し合いの時に最初に名前が挙がったのがMarcyだったんですよ。こいつがいたバンドも知っていて、一緒にライブやったこともあったけど、深い絡みはなくて。マインドがあるやつなのは知っていたので「一緒にやりたいな」って話して、そのミーティングは終了したんです。ミーティング後に飲みに出て、二次会、三次会と続いた後で最終的にコンビニの前に集まっていたら、たまたまバイト終わりのこいつがやってきたんですよ!そこで、これは運命だと思って「お前入れ」って言ったんです。


―遭遇する前に自分が話題に上っていたと思わないですよね(笑)


Marcy)思わなかったですね(笑)びっくりして、2週間くらい気持ちを整理する時間をもらって、正式に返事をしました。


―何か加入の決め手があったんですか?


Marcy)高校時代からFUNNY THINKのライブには行ってて、自分の好きなジャンルと通ずるものがあっていいなと思ってたんです。本当に音楽大好きな方々なんで楽しそうだなと思っていたし。加入を決める話し合いがある日の朝に2人の出身地の大船渡に行ってきたんですよ。盛岡を深夜に出発して、早朝に大船渡に着く計画で。大船渡で育ってきた2人の中に入るので、大船渡の朝日を見て「よし、やろう」と思って、その日の昼に伝えました。それが去年の10月下旬です。


―そこから今作の制作に取り掛かったわけですね。


金野)7曲中のほとんどは前からあった曲ですけど、アレンジやコーラスだったりは3人でやりました。7曲目のCOMPASSが初めて3人で作った曲です。


―ミニアルバムが完成してみて手応えはいかがですか?


金野)まだ、リリースしていないので、リスナーの反応はわからないんですが、手応えはあります。我ながらカッコイイなぁと思いますね。


森)前作の「くだらない日々」というミニアルバムから比べると、よりいろんな人に聴いてもらえる作品になったと思います。メロコアとかひとつのジャンルに縛られず結構いろんな曲がそろっているので。


金野)今回はちゃんと準備して考える時間もあったので、前作と比べると良くなっていると思います。内面的な話でいうと、より緻密に、自分のことを考えて歌っているなというか。俺って自分のことしか歌えなくて「自分が頑張るから、お前も頑張れよ」スタイルなんですよ。「無条件で人を勝手に応援できないので」っていう書き方しかできなくて。そういう意味で、結構自分と向き合えてたのかなって思います。


―「自分も頑張るから、お前も頑張れよ」っていう寄り添い方がにじみ出ているからこそ歌がしっかり届く「歌の強さ」を感じました。


金野)そうですね、歌…。歌い方は確かに意識しているというか。それこそ、自分はこの通り声が通らないので、蓄膿ボーカルなんですよ。前はコンプレックスに感じてたんですけど(BRAHMAN/OAUの)TOSHI-LOWさんに「すげーいい」っていってもらったことがあって、その瞬間から気にしなくなりました(笑)


―それではいくつか収録曲の制作を振り返ってもらおうと思います。一番印象的な曲ってあります?


金野)COMPASSからいきますか。


―お、アルバムの最後を飾る曲から。3人で初めて作った曲ですね。


金野)そうですね。もともとサビの「今日から俺たちは」ってメロディーは酔っぱらいながら俺が打ち上げ終わりとかで一人で歌っているメロディーだったんですよ。いつか曲にしようと考えていたけどなかなかできずにいたんで、ちゃんと曲にしてみて、この二人に投げてスタジオでつくったんだよね。


Marcy)そうですね。


金野)この人(Marcy)が2ビート好きなので、しょうがないから使ってあげようかなって(笑)COMPASSは歌詞も、結構3人でのスタートにふさわしいような感じのなんですよ。そこも意識したっすね。


―新しいスタートっていうことですか?


金野)そうですね。俺は再スタートとは考えてなくて、加入してなんなら「イチから」みたいな感じだったので、生まれ変わったというか。そういうイメージはありました。なので、みんなの応援歌が俺たちの応援歌でもある気がします。


森)どうして7曲目にあるのかっていうのを紐解いてみると意外と面白んじゃないかなと…アルバムって物語みたいな感じだと思っているんですよ。1曲目から7曲目まで起承転結があると思うので。ちゃんと聴いていくと「あ、そうなんだ」って気づいてもらえるはず。


金野)起承転結って話がでたけど、確かにそうかもしれないですね。でも「結」ではない気がするんですよ。「起承転起」みたいな。それでいいかなと思うんですよね。別に終わらないので。ちょっと上手くないですか今の?(一同笑)


―全ての詞曲を金野さんが手掛けていますが、打ち上げ終わりとかで、曲が浮かんでくることが多いんですか。


金野)そうですね。反骨精神から曲を書くことが多いので。それをパンクとして捉えてもらえれば最高なんですけど。負けず嫌いなところが原動力なんで。


―続いて、先日ミュージックビデオも公開されました3曲目の「パンクロックが鳴る夜に」。いい曲ですね。


金野)ありがとうございます。これはイントロがベースから始まる曲を作りたいと思ったことが始まりで。メロディーを重視しつつ、最後のリフレインしているところで全部持っていける曲だと思う。これを作ったときのことは覚えてなくて、でもいい曲書きたいと思って作った気がします。


―ライブでも中心的な存在になりそうな曲ですけど、バンドの中でのこの曲はどういう位置づけですか?


金野)そうですね、自分たちもやっていて楽しいですし、お客さんの反応も良かったりするので。本当に柱ですね。


Marcy)バンドとして柱になるような曲ですし、他の曲にはないというか、いろんな人に刺さるようなグッドメロディーだなと思いますね。


金野)「このコードにこのメロディーが乗るのはすごい」って言っていただいたことがあって。意識してないんですけど、そういう面ではいいのかなと思います。


森)お客さんが聴いていても一番、伝わりやすい曲かなとは思っていて。さっきグッドメロディーって話出ましたけど、その通りだと思うし、サビの「君だけに歌う 君だけを見てる」とか、お客さん一人一人に言っているような感じで伝わっているという感触を、ライブをしていても感じる瞬間があるので。そういうのを含め、いろんな人から評価をいただいた曲なので。大事な曲だなと思う。


―森さんの話を聞きながら思ったんですけど、この曲をライブで演奏するときに、歌が聴いている人の内側に入ってその人のことを励ますっていうか、その人の内面を上げる力があるんじゃないかなって思いました。物理的に人の背中をポンって押したら人は前に踏み出す格好になるけど、でもそうじゃなくて、その人が「歩こう」とか「走ろう」って思う時って、自分の意思で足を前に踏み出そうと思わないと進まないでしょう。そうやって比べると、誰かに背中を押されるよりも、自分の力で足を一歩前に出すほうが難しいですよね。


金野)確かに。歌詞みたい。


―そういう力がある曲だなと思いました。


全員)ありがとうございます。


―続いて4曲目の「桜が咲く頃に」についてお願いします。


金野)これは…人生で初めて震災のことについての曲を書いてみたんです。今まで避けてきた訳ではないないんですが、特に意識してこなかった。俺も森君も自宅が被災しているんですけれど、大事な友人が死んでいるわけでも、親せきが死んでいるわけでもない。そのなかでこう…大ごとではあったんですけど、自分の中でちゃんと向き合ったことがないんですよ、意外に。なので、ちゃんと向き合ってみようと思って書いたんです。だから、この曲の一連は震災の話で、震災で亡くなった特定の人を思い浮かべられないんですけど、亡くなった方に向けて歌っていますね。


-震災のことに向き合ってみようと思った何かきっかけがあったんですか?


金野)前々から思ってはいたんですけど、向き合い方ってよくわかんないじゃないですか。でも俺には音楽があったので、それで向き合ってみようと思ったんですが、きっかけは、特にないかもしれないです。


-金野さんも森さんも小学校6年生の3月に震災が起こって、被災を経験して、自分で考える間もなく周囲が大きく変わっていった出来事だったと思います。中学、高校と成長するなかで、もしかしたら、震災をどう受け止めたらいいのかとか、どう表現したらいいのかとか、もやもやしたままだったのかなと思いました。でも、その間に音楽に出会って、音楽という手段を手にした。そこで、自分たちの思っていたことを音楽で形にしたということでしょうか?


金野)そうですね。


-でも、ずっと、触れないこともできたと思います。


金野)確かに。ただ、触れるのが、勝手に責任というか、使命だなと前々から思っていたので。経験したからには何か残すというか。今回はこうやって曲として世の中に出せたのでいいと思います。なかなか、東日本大震災で被災してこうやって曲書いているバンドっていないと思うんですよ。経験していない人が書くことはあると思うんですけど。


-この2人の中にいるときのMarcyさんはどんなことを思いますか?


Marcy)俺は盛岡出身だったので、震災の時は小学4年で学校にいて。2~3日停電が続いて、沿岸とかがどういう状況になっているっていうのは、当時全く分からなかった。電気が通って、ニュースを見て、すごい大ごとになっていると知った。実際に見に行っている訳ではないのに、テレビの画面は印象に残っているんですよ。だから、実際にそこにいて、被災した2人の…なんつうんだろ…思いとかは正直俺はよくわからないんですけど、でも何だろう、被災したメンバーがこの曲を歌っていることに意味があると思いますね。


―森さんはどうですか?


森)俺は震災に対する思いが自分では強いほうだと思っていて、言葉に出さずともいつかはそういう曲を作って、やりたいなっていうふうには思ってました。9年たって、だいぶ忘れている人は忘れていて、経験した人でもその時のことが割と薄くなってきているという瞬間が絶対あると思うんです。そういった意味では歌詞も、震災のことを直接言っていなくても聴く人にはわかるところもあると思うので、一生歌っていきたい歌です。絶対に風化はさせたくないって思っているし、自分が音楽やっている以上は、それが使命だと思っているので。ライブやっていても、その時のこととか思い出すんですよ。自分も震災当時、小学6年で、それこそ家は流され、親とも会えないっていうのが1週間あって。初めて見たまちの風景とかも思い浮かぶんで。自分が忘れないためっていうのもありますし、周りの人たちもあの時のことを忘れてほしくないので。さっきも言いましたけど、ずっと大事にしていきたい曲ではありますね。


-風化させたくないという強い気持ちが伝わってきました。


森)当たり前だと思っていたものが急になくなる瞬間って、俺的にはしんどいと思うんですよね。普通に見慣れていたまちの風景とか、当たり前にいた人が亡くなる瞬間って、本当に自分の心にでっかい穴があくと思っていて。突然そういう瞬間が起きるときのショックって相当だと思うんですよね。これまでの災害の教訓を生かして、当たり前のことを大切にしていく。その両方が大切だと思っています。


金野)でも、人間なんで、絶対忘れるんで。俺も忘れてますし、考えない日もありますし。でもこうやって話すと考えますし、こういう曲が1曲あれば何かきっかけになるかなと思いましたね。


-アルバムからは少しそれるんですが、ここでちょっと違う質問をしたいんですけど…FUNNY THINKの成り立ちのなかで震災は深いつながりがあると思います。金野さんが「AIR JAM2012」のDVDを見てHi-STANDARDにあこがれて、同級生だった森さんを誘って中学2年でバンド活動を始めた。Hi-STANDARDも震災があって復活したバンドです。震災が、自分たちにとって音楽を始めるきっかけの一つになっている。震災や地元・大船渡との関わりと、自分たちの音楽活動をどう捉えているか聞きたいです。


金野)そうですね。いま、俺は震災のためにバンドをやっているとは思っていなくて。そんなに知名度もないので、俺らがやれることなんて底が知れてるんですよ。ただ、デカくなりたいので、大きくなっていったときに、間接的にでも、直接的にでも、いずれは地元のために何かができる瞬間がきた時に俺はやればいいと思っているので。今はあんまりその…なんていうんですかね、震災のためとかっていうのは考えていないですね。来るべきタイミングが来た時にやればいいと思っています。


森)一晟と似たような考えですけど、震災後に地元にできたライブハウスで生まれたのは事実なので、そこは切っても切れないです。さっき言った通り風化はさせたくないから、そういう曲も歌ってはいるけれど…だからっていって、震災のためとかっていうわけではなく…ほぼ一晟と同じ考えです。


金野)一番は自分たちのためですね。この気持ちを共有しているのか、俺に合わせてくれているのか。


森)まあ心ですかね。以心伝心ですね。


金野)そういうことにしておきます(笑)


-Marcyさんは、どう思っていますか?


Marcy)震災を受けて、そこにできたライブハウスで生まれて、そこから活動を止めないで動き続けていることが、俺は結構すごいことだと思っています。続けることに意味があって、続けていれば絶対いいことあると思っているし。俺もそんなに震災のことは意識はしないで、自分のためにって感じですけど、でも被災地のライブハウスで生まれて歩みを止めなかったこの2人がすごいなって、俺は思いますね。


森)照れるっすね(笑)


金野)止めなかったっていうか、別に止める理由がなかった。震災があってハイスタが復活して、AIR JAMの映像を見て、バンドがやりたくなった。メンバー集めて、大船渡にできたライブハウスがあるから「よし出よう」って始まって。そしたら、高校生でいしがき(ミュージックフェスティバル)も出られた。それで「楽しい、楽しい」って進んでいったら、いろんなバンドの方々と対バンさせてもらえる機会にも巡りあった。そこからも、ずっと「楽しい、楽しい」って続けてきて、今になっているので、そんなにすごくないですよ。やりたくてやっていることだから、そんな感覚なので、そんなにすごくないです。


Marcy)いや、すごいです!いや、なんかそうじゃなくて。そりゃ自分のやりたいことやるのは当たり前なわけで、それでもやめちゃう人もいるし。それで続けてきたから、いしがきにも出られたし、今があるんだよ。だから続けるって大事です。


金野)です!


森)継続は力なりですね(一同笑)


-全員で各曲を振り返りましたけれど、今回のアルバムのテーマとするとどんなことですか?


金野)チャレンジ、挑戦です。タイトルも「陽はまた昇る」ですし。今は(新型コロナウイルス感染症の影響で)日本がこういう状況で、だからこのタイトルを付けたわけではなくて、前から決まってたんですけど、たまたまマッチしてしまった。この1枚から無名の地方のインディーズバンドがのろしを上げて、この1枚で全国に挑戦するというのがコンセプトかもしれないですね。


-今後目指している事を教えてください。


金野)近い目標では盛岡のクラブチェンジの箱をワンマンでソールドしたいですね。遠いとこだと、ツアー行ってホテルに泊まりたいです(笑)


森)バンドの目標は共有しますが、個人的な目標を決めると達成したときに一気にモチベーションが下がっちゃって、達成感で終わっちゃうので。目標は青天井で、とりあえず進むだけです。


Marcy)ホテルには泊まりたいんですけど…遠い未来の話かもしれないですけど、ずっとライブバンドであり続けたいですよね。


-今のライブが出来ない状況はつらいですね。


Marcy)つらいですね。つらいですけど、なんだろう、アルバムにつなげますけど「また陽は昇る」ってタイトルじゃないですか。


金野)「陽はまた昇る」だ!


森)おいおいおい(笑)


Marcy)「陽はまた昇る」!今はずっと夜かもしれないけれど、でも、必ず朝はやってくるので。ライブができないのはすごくつらいですけど、自分でいうのもあれですが、このアルバムに期待しているし、自分たちのともしびになればなって思ってます。


1st mini Album「陽はまた昇る」

2020.6.24. release


¥1,800 [税込] / FBRC-0001

発売元:FIGHT BACK RECORDS

販売元:PCI MUSIC


01.keep the edge

02.永遠

03.パンクロックが鳴る夜に

04.桜が咲く頃に

05.トケルヨル

06.ディアヒーローズ

07.COMPASS

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